13 五鈷鈴・五鈷杵 

表紙

 五鈷鈴は、五鈷杵形の柄をつけた金剛鈴で、金剛鈴の中では種類・数量ともに多く、これを細部の形式で大別すると素文{すもん}鈴、仏像鈴、三昧耶{さんまや}鈴、種子{しゅじ}鈴などに分類されます。本品は種子鈴で、握部に蓮弁と鬼面を鋳出し、胴部には朝鮮梵字で胎蔵界四仏の宝憧{ほうどう}如来(ア・東)、開敷華王{かいふげおう}如来(アー・南)、無量寿如来(アン・西)、天鼓雷音{てんくらいおん}如来(アク・北)をあらわし、その間に宝相華を、その上下に連珠文を、さらに上に独鈷杵、下に三鈷杵、口縁に蓮弁帯を配しています。

 五鈷杵についても握部の鬼面や、八葉蓮弁、鉾の獅噛などの近似から五鈷鈴と同じ工房の作品とわかり、一具の法具として伝来したものと考えられます。

 本品は、胴の梵字が高麗時代に使われた種字であり、鎌倉時代に朝鮮より請来され、当寺に伝わる称名寺開山審海ゆかりの他の密教法具に編入されて、小網寺に伝来したものと考えられています。

 梵字は、サンスクリットと呼ばれる古代インドの文字であり、握部の鬼面のルーツは、ギリシャ神話に登場するメドゥーサとされ、ギリシャ彫刻に作例があり、遠い文化の流れが、この仏具の造形のなかに表われています。

五鈷鈴
金銅 (22.0)
高麗時代
館山市・小網寺
五鈷杵
  金銅 (19.0)
高麗時代
館山市・小網寺