【2】八犬伝ミニストーリー 1.物語の発端/安房へ 

表紙

 いまから570年ほど前、鎌倉公方足利持氏の忘れ形見、春王・安王の二人を奉じて結城の合戦が始まりました。恩顧節義のために里見季基{すえもと}も長男の義実{よしざね}とともにこの挙兵に馳せ参じます。結城方は城に立てこもり、1年余りよく戦いましたが、多勢に無勢で敗れてしまいます。

 その落城の日、討ち死に覚悟の義実にむかって、父季基は「武士の面目はもはや十分。汝は落ちのびて我が里見家を再興せよと」厳しく命じました。

 義実は里見家譜代の老臣杉倉木曽介氏元、堀内蔵人貞行のたった二人を供として、逃れのがれて相模国三浦の浜へたどり着きます。

 対岸はるかに煙る安房の山々を見渡していると、突如黒雲が湧き起こり、真っ白い龍が天へと駆け上っていったのです。驚いた義実ですが、きっとこれは天の導きで、吉祥に違いないと安房へ渡る決心をします。

八犬伝三浦の浜 豊原国周画