3.宝刀村雨丸 

表紙

 結城の落城の時、春王・安生から宝刀「村雨丸」を預かった大塚匠作は、息子番作にこれを託して、壮絶な忠死を遂げたのです。

 番作が故郷の大塚村に戻ってみると、すでに姉亀篠{かめざき}・蟇六{ひきろく}夫妻に大塚家は横領されていて、それどころか、今度は村雨丸までも我が物にしようとたくらみます。

 策略の中で、ついに番作は一子信乃に滸我{こが}の成氏公に宝刀を献上するように遺言して切腹します。信乃は父の遺言を心に、村雨丸を絶えず肌身離さず守っていました。

 いよいよ滸我に出立する間際のこと、信乃は叔父の蟇六から、お前の祝膳のためだと、むりやり漁に誘われます。川舟から落ちて溺れるふりをする蟇六を助けるため、やもえず村雨丸を舟の中に置いて飛び込みます。

 ほんのわずかな時間でしたが、舟の中には浪人網乾{あぼし}左母二郎が一人残っていたのでした。

木曽街道六十九次之内板橋 犬塚信乃
歌川国芳画