8.対牛楼の決闘/美犬士毛野 

表紙

 快刀無双の小文吾が武蔵国高屋畷{なわて}の深田の中の一本道を歩いていると、正面から手傷を負った大猪が猛り狂って突き当たってきました。

 小文吾は逃げ場がないので、猪の背に飛び乗り、拳で眉間を殴って退治しました。道に猟師が倒れていましたが、薬を与え介抱すると息を吹き返しました。この男は鴎尻{かもめじり}の並四郎といい、お礼にもてなしたいといい、その家に泊まることになったのです。並四郎は寝静まった真夜中に強盗に豹変して襲ってきましたが、用心深い小文吾は難を逃れて成敗します。

 この男の女房も船虫という稀に見る悪女で、詫びの印といって、あらし山という千葉家の名笛を言葉巧みに押し付けたのです。讒訴された小文吾は道中で取り調べられるのですが、笛は受け取らずこっそりと船虫の家に置いてきました。

 この機転で疑いが晴れた小文吾は千葉介自胤{よりたね}に気に入られますが、家老馬加{まくわり}大記常武の陰謀により対牛楼{たいぎゅうろう}に軟禁されてしまいます。日々むなしく過ごす小文吾を助けたのは、馬加大記を父の仇とする女田楽の旦開野{あさけの}こと美男犬士の犬坂毛野胤智でした。

見立八犬伝之内鳥越縄手
豊原国周画
対牛楼 歌川豊国画