なたぎり  

なたぎり神社とは

 なたぎり神社はふたつある。山側(南)の浜田区にあるのを船越鉈切{ふなこしなたぎり}神社、海側(北)の見物 区にあるのを海南刀切{かいなんなたぎり}神社という。船越鉈切神社の本殿は洞穴の中に建てられ、海神の御子・豊玉姫命{とよたまひめのみこと}を祀る。海南刀切神社の本殿は、高さ約10mの真っ二つに分かれている異様な形の巨岩の前に建てられている。この巨岩が二つに割れていることについては、対岸相模から来た神による大蛇退治の伝説などが伝えられている。 両社は鉈切大明神の上之宮と下之宮として一社一神とみなされ、互いに分かちがたく、海の神・海上安全の守護神として船乗りたちに崇敬されてきたようである。例祭は両社ともに毎年7月14日・15日に執り行われる。

海南刀切{かいなんなたぎり}神社

(1)石灯篭{いしどうろう}

 長須賀村の石工鈴木伊三郎が、天保7年(1836年)に彫ったもので、見物村の氏子が奉納した。

(2)日露戦争記念碑

 西岬村から日露戦争に出征した人たちの名を刻んだ記念碑で、元帥大山巌の揮毫文字。陸軍118名、海軍16名の名がある。関東大震災で倒れて大正15年に建て直したが、昭和7年の暴風雨で再度倒れ、昭和10年に在郷軍人会と国防婦人会の西岬分会が再建している。

(3)力石{ちからいし}

 その昔、見物村の屈強の若者達がこれを持ち上げて力くらべをし、諸願成就を祈願して当社に奉納したもの。船越鉈切神社入口にも3つある。

(4)手水石{ちょうずいし}

 神に参拝する前に口や手を清めるための手水舎がある。流水を満たした水盤は文化9年(1812年)に奉納されたものである。

(5)狛犬{こまいぬ}

 天保10年(1839年)、楠見村(館山市館山)の石工田原長左衛門が江戸京橋の彫工兼吉とともに彫ったもので、神社の魔よけとして見物村若者たちが奉納。台座には左の狛犬に白虎と朱雀、右の狛犬に青龍と玄武の四神も彫られている。

(6)拝殿{はいでん}

 礼拝するための拝殿の周囲には、たくさんの彫刻がほどこされている。竜や獅子のほかに、天岩戸開きの図やヤマタノオロチ退治の図、孝子の図などもある。作者は北条村の後藤忠明一派で、明治16年頃のもの。

船越鉈切{ふなこしなたぎり}神社

(1)石灯篭{いしどうろう}

 常夜灯として参道入り口の両側に1対で奉納されている。文化10年(1813年)霜月吉日に、浜田村の江川与七らが願主として中心になり、館山湾岸から太平洋岸の北朝夷(千倉町)に至る50以上の海付の村々と漁師たちの寄進によって建てられた。石工は北条の加藤伊助。

(2)鎌田万次郎君之碑

 明治33年(1900年)の義和団事件(北清事変)で北京に出兵し戦死した、西岬村坂田出身の鎌田万次郎の記念碑。海軍二等水兵。享年23歳。碑は伯爵万里小路通房の篆額、安房郡長江口英房の撰文。書は元長尾藩士で書家の熊沢直見。明治34年に建てられた。

(3)やぐら

 鎌倉や房総半島で、鎌倉時代中期から室町時代にかけて数多くつくられた武士階級の墓である「やぐら」がふたつ並んでいる。一方には宝塔の形が浮き彫りにされていて、地元では長者夫婦の墓と伝えられている。

(4)手水石{ちょうずいし} 

 安政2年(1855年)に、名主竜崎善兵衛らを世話人にして、地元の若者たちにより納められた。

(5)石灯篭{いしどうろう}

 元禄6年(1693年)に、浜田村領主の旗本石川八兵衛尉政往が奉納したもの。1対の片方だけが残されているが、火袋がなくなっている。

 

(6)鉈切洞穴{なたぎりどうけつ}

 およそ2万年前に自然の営みでつくられた海食洞穴。館山湾に面した標高約25mの海岸段丘にあり、洞穴の入口は高さ(最高所で)4.2m、幅5.85m、奥行36.8mと大きい。縄文時代に洞穴住居として使用されていたことが発掘調査でわかっている。古墳時代には一部が墓所として利用されていた。その後は海神を祀る神社として地元漁民の信仰をあつめ、現在に至る。県指定史跡。

その他の文化財

★ 独木舟{まるきぶね}

  館山市指定文化財。この舟が当社に奉納されていることは、すでに水 戸徳川光圀の大日本史に記載され、明治27年に歴史家の岡部精一が調査したのをかわきりに、西村真次・松本信広ら戦前の研究者も調査しており有名である。しかし出土品でないため年代の断定がむずかしく、由来についても古来より諸説紛々である。長さ219cm。

★ 鰐口{わにぐち}

 館山市指定文化財。刻まれた銘文から、元禄10年(1697年)に紀州栖原の鯛網漁師で房総に出漁していた芦内佐平次らによって寄進されたことがわかる。作者は江戸神田鍛冶町の鋳物師中村喜兵衛。

★ かっこ舞

 館山市指定文化財。毎年7月14日・15日の例祭の日に両神社で奉納される獅子舞で、雨乞いのための儀式とされている。ちなみに見物の獅子頭は赤で、浜田の獅子頭は黒。



平成15年度博物館実習生制作

石母田陽子 髙木亜里砂 神藤千穂 冨士本理恵 井上美和子 内藤裕加里(以上東京工芸大学)

監修 館山市立博物館